ご挨拶

ひまわりの花

初めてお会いする方の中には、私を見て驚かれる方も少なくありません。私は右手に障害を持っているからです。原因は不明なのですが、右手首より先がない状態で生まれてきたのです。

今、私自身が子どもを持つ身となり思うのですが、障害を持って生まれてきたわが子を見た時の父母の驚きは察するに余りあるところです。念願かなって、弁護士の仕事に就いた時は、ここまで愛情を持って育ててくれた父母に感謝の気持ちでいっぱいでした。

生まれつき右手が不自由でしたので、食事、着替え、歯磨きなど、ありとあらゆる日常生活は、左手だけでこなせるよう「技術」を身につけていきました。左手だけで靴ひもを結ぶのにとても苦労したことを覚えています。子どもならば、靴ひものない履物をはけばいいのですが、将来、スーツに革靴になっても苦労しないようにと父親に何度も訓練させられたのでした。

小学校時代は、野球や鉄棒に興じる友達を見ると、寂しさや悔しさを感じることもしばしばありました。父はそんな私に対し、幼いころから「技術を身に付けろ」と事あるごとに語りかけてきました。今、思えば、この子が成長し、やがて自分たちが先立ったあとも一人で生活していけるようにと将来に心を砕いていたのだろうと思います。

小学校、中学校、高校と友人に恵まれ、困った時も手を貸してくれる友がそばにいてくれたことで、楽しい学校生活でした。そんな中で、「弁護士」という職業にひかれたのは、小学校6年の時、友達のお父さんが大学の憲法の先生であったことから、司法制度というものを知り、弁護士として、社会的に弱い立場にある人を自分の力で少しでも助けてあげることができたらという思いが日増しに強くなっていったのでした。

受験勉強を経て、司法試験の合格者を多数輩出する中央大学法学部に進み、いよいよ法曹資格を得て、弁護士になるという夢が近くなってきたと実感していました。勉強を重ねて、臨んだ司法試験ですが、なかなか思うような結果が出ず、挑戦を繰り返した結果、夢をかなえることができたのでした。

不合格が続き、やはり自分には司法試験にパスするのは無理なんだという弱気な思いにかられたこともありました。一時は外出どころか人と話すことすら、嫌になってしまう時期もありました。家に引きこもっているという噂を聞いた友人たちが息抜きにとドライブに誘ってくれたり、メールや電話でエールを贈ってくれたりと友情をこれほどうれしく感じたこともありません。

そんな励ましもあって、もう一回挑戦してみようと、力を奮い立たせて、再チャレンジ。翌年、無事、司法修習生になることができたのでした。

生まれつき不自由な体を持ち、受験勉強で苦しんだ末に司法試験に合格できた私は、決して才能あふれる身ではなく、エリートでもありません。弱さや心の葛藤を持つ人の傷みを理解できる、いや自分自身も脆くて弱い人間だからこそ、弱い立場の人の力になれるんだと思います。

社会の狭間で苦しむ人、法律の制度で救われるべき人。そんな方々の立場を理解し、弱い者の視点から、法律の世界で問題解決ができるようになりたいと願い続けています。

私たちが身につける弁護士バッジは、ひまわりの花の中央に天秤がデザインされています。太陽に向かって咲くひまわりは、「自由」と「正義」の象徴で、天秤は「公正」「平等」を表しています。

正義と公正を忘れず、自由と平等を尊重し、常に弱者の視点を持ち続ける-そんな弁護士でありたいと念じています。

弁護士 樋詰 哲朗